下がる、下がる…と噂の不動産価格が本当に下がる「あるタイミング」

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現代ビジネス
下がる、下がる…と噂の不動産価格が本当に下がる「あるタイミング」

写真:現代ビジネス

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マンション価格が暴落する――そんな切迫したタイトルが表紙に踊る雑誌や書籍をよく見かける。が、東京オリンピックに向けて建築需要は旺盛だそうで、国内各地の外国人観光客も衰えを見せず、不動産価格が下落する雰囲気はあまり感じられない。『マンション格差』(講談社現代新書)の著者で、住宅ジャーナリストの榊淳司氏に、本当のところを聞いてみた。
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下がる、下がる…と噂の不動産価格が本当に下がる「あるタイミング」

財務省(旧大蔵省)出身の黒田東彦・日本銀行総裁 photo by gettyimages
金利が上がれば不動産価格は下がる

 首都圏の不動産市場をウォッチングして30年になるが、ここ10年ほどできわめて顕著になった法則がある。それは「不動産価格と金利の連動性」である。

 ひと言で言えば、金利が下がるとマンションをはじめとした不動産の価格が上がる、というものだ。逆に、金利が上がれば不動産の価格は下がる。ただ、2008年のリーマン・ショックから約10年、金利が上がる場面はほとんどなかった。

 マンション価格の変化を細かく見ると、平成バブル崩壊後の1991年から2002年までは、基本的に下降曲線をたどった。そしてこの間、長期金利も下がり続けた。バブル崩壊による大不況の到来を、金利を下げることで何とか押しとどめようとしたのだが、敵わなかった結果である。当時、不動産価格は金利と連動していなかった。

 そして、2003年ごろ、金利が底を打つ。国内外のファンドが低金利を利用して日本国内の不動産を買いまくり、価格はハネ上がった。このときの動きはまさにセオリー通り、金利が下がって不動産価格が上がった。

 その後、長期金利は2006年から08年にかけて、低い山に登るように超短期的な上昇局面を迎える。そしてその年の9月、米投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破たんし、金融危機が始まった。長期金利は低い山から0%の底を目指して下落した。高騰していた不動産価格はまたしても下降局面に入り、多くのマンションデベロッパーが倒産した。

 2013年3月、元財務官の黒田東彦氏が日銀総裁に就任すると、異次元金融緩和が始まった。

 史上最低レベルに下がった金利と、年間80兆円にものぼるマネタリーベース(=市中に流通している現金と日銀当座預金の合計)の増加によって、不動産担保融資や住宅ローン融資の残高はみるみるうちに増加。マンションをはじめとした不動産価格も目に見えて上がった。ただし、このときの価格上昇は一部の地域に限られたため、いまでは「局地バブル」と呼ばれている。

 現在、局地バブルが起きたエリアの不動産価格は高止まりしている。金利も史上最低レベルに張りついたままだ。ただ、マイナスまで低下した金利は、これ以上に下がりようがない。言い換えれば、低金利による不動産価格の上昇圧力はすでに限界に達しているのである。

日銀総裁の任期切れが「ターニングポイント」

 米連邦準備理事会(FRB)は2017年に入って、3月、6月と2度にわたって利上げを行った。イエレン議長のようなセントラルバンカーたちは、リーマン・ショック以降の量的緩和で低下した金利を、一刻も早く「正常化」したいはずだ。専門家の間でも、今年中にあと1回は利上げがあると予想されている。

 ところが、日本ではいまのところ利上げの動きはない。

 しかし、異次元金融緩和を主導してきた黒田総裁は2018年3月で任期が切れる。次期総裁は財務省出身ではなく、日銀出身のセントラルバンカーになるとみられる。そうなれば、日本でも金利が「正常化(上昇)」に向かう可能性がある。すでに、日米の長期金利の差が縮まるという観測も出始めている。

 さて、ここで不動産市場に目を向けよう。実は、個人投資家向けの利回り物件と呼ばれる1億円から10億円程度のアパートやマンション、ビル(一棟)の価格は、現在、投資利回りが5%前後のレンジに集約されてきている。金利2%弱の銀行融資を受けて不動産投資を行う場合、キャッシュフローがほどよく黒字になるギリギリのラインが利回り5%なのである。

 見方を変えれば、5%の利回りが得られない物件には買い手がつかない。要するに、投資向け物件の価格は「上がるところまで上がった」状態で、これ以上は上がりようがない。だから、これから金利が上がった場合、その分利回りを上げないと買い手がつかなくなる。つまり、価格を下げないと売れないわけだ。

 住宅ローン金利にも同じことが言える。借入金利が年4%ほどの時代、安全に購入できるマイホームの価格はおよそ「年収の5倍」と言われていた。ところが、いまでは年1%未満で借りられるケースも多いので、年収の7倍、8倍でも無理のない返済プランを立てられる。

 そのせいか、低金利による局地バブルの起きたエリアでは、新築中古ともマンション価格が2~4割程度値上がりした。それでも売れる物件は売れた。

 しかし、これから日銀が利上げに動き、それに連動して住宅ローン金利が年2%強に上がった場合、安全に購入できる価格はせいぜい年収の6倍程度になるだろう。そうなると、マンション価格への強力な下落圧力となる。

 ほとんどの不動産投資は、資金融資を受けて行われている。また、ほとんどのマンションも住宅ローンを利用して購入される。その当然の帰結として、マンションをはじめとした不動産の価格形成に、金利は重要な役割を果たすことになる。その金利が上昇に転じようとしているのだから、不動産価格に影響がないわけがない。

 いま、不動産価格は内外の金利上昇を睨んだまま、下落のタイミングを探っているように思える。少なくとも、2018年3月にあるはずの日銀総裁交代で流れは変わりそうだ。そこで起こりうる金利上昇を見計らった動きが、この冬ごろから出てくる可能性が高いと、筆者は見ている。

「暴落」を後押しする二つの可能性

 最後に、金利上昇による不動産価格の下落を助長しかねない、いくつかの要素に触れておきたい。

 第一に、アパート価格の動向だ。すでに昨年からさまざまのメディアで取り上げられている話題だが、首都圏の郊外で木造アパートが急増している。2015年1月に相続税の基礎控除が引き下げられたことをキッカケに、子どもたちへの有利な資産継承を狙う郊外の地主さんたちが、業者の甘いささやきにのせられて次々とアパート経営に乗り出しているのだ。

 しかし、この動きには多くの危険が潜んでいる。

 そもそも、木造アパートはここ数年余剰感が目立っていた。わかりやすく言えば、空室だらけになっていた。そこへきて、このアパート建築ブームだ。郊外のアパートはすでに空室率がかなり高くなっている。当然、家賃にも下落圧力がかかっている。

 この建築ブームが始まる以前から、アパートを経営している人たちは、空室増に歯止めがかからない状況に早々と見切りをつけて、1棟まるごと売却する動きを見せていた。これから経営難に陥ったアパートがさらに大量に売りに出されることだろう。ダメ物件は「満室時利回り40%」などといった叩き売り同然の値付けもありうる。

 極論をすれば、これからアパート価格の暴落が起こる。早ければ、この秋から冬にかけてその動きが表面化する可能性もある。もちろん、木造アパートは不動産市場の中では規模の小さなカテゴリである。が、同じ利回り物件である1棟もののマンション価格にも影響が及びやすいというのは、業界関係者の常識だ。不動産市場全体へも侮れない価格下落の圧力になりうる。
下がる、下がる…と噂の不動産価格が本当に下がる「あるタイミング」

水爆の完成(と言われる)ニュースに目をやる歩行者たち photo by gettyimages
ミサイル「着弾」なら市場は凍りつく

 第二に、多くの方が程度の差はあれ感じておられるだろう、朝鮮半島の動向だ。

 今年4月25日付けの記事で書いたように(「『朝鮮半島有事』が不動産市場に巻き起こす中国人『爆売り』の脅威」)、東日本大震災が起こった2011年、首都圏の不動産市場は凍りついた。連日のように起こる大きな余震と、福島第一原発の放射能漏れを伝えるニュースに、「これで日本も終わりか」と考えた人も多かったはずだ。

 新築マンション市場では、多くのモデルルームが一時的に閉鎖された。販売予定だった物件は、スケジュールが無期限に延期された。中古マンションや投資用の利回り物件も市場は開店休業状態。ほとんど取引が行われなかった。国の存亡が危ぶまれているのに、何千万円から何億円もの大金を動かす買い物や投資をする気分になれるわけもない。

 では、朝鮮半島で有事が起きた場合、日本の不動産市場はどうなるのか? 
 事件が朝鮮半島の中だけで起こり、短期間で終結すれば、影響は軽微で済むだろう。しかし、大規模な紛争に発展したり、政治的に不安定なまま硬直状態といった場合は、日本人にとってもかなり深刻な心理的不安につながる。不動産市場の動きも当然鈍るはずだ。

 『週刊現代』が北朝鮮中枢の証言として、同国のミサイルは横須賀基地に照準を合わせていると報じている。報道通りにミサイルが発射され、さらにそれが何らかの被害につながった場合、着弾した場所がどこであろうと、不動産市場は東日本大震災のときのように凍りつくだろう。

 そして、事態が何らかの形で改善されて市場が動き出したとしても、不動産価格の大きな下落は避けられないと考えるべきだ。金利上昇の可能性、郊外アパートの問題、さらには北朝鮮の有事可能性。不動産市場はこの秋冬から下落、あるいは暴落のリスクにさらされているということを、多くの人に知っておいていただきたい。

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マンション価格下落の兆しはいつ、どのような形で明らかになるのか。人工知能を用いて、部屋ごとの価格を高い精度で試算できるサービス「家いくら? がスタートした。ぜひご活用いただきたい。(現代ビジネス編集部)
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